コーヒーと切っても切り離せない関係なのがロースト。
普段コーヒーを飲むうえではあまり気にしない項目かもしれませんが、ローストはコーヒーの味を決める重要な要素の一つなんです。
どんなにいいコーヒー豆でもローストを失敗してしまうとたちまちまずくなってしまいます。
ということで、今回はコーヒーのロースト別の違いを解説します。
記事のざっくりした内容
コーヒーのロースト(焙煎)とは?
そもそもローストという作業はなんなのでしょうか。
皆さんがよく見るであろうコーヒー豆は黒々としていてなんだかてかてかしているものですよね。
このような色や形はすでにローストが終わったコーヒー豆です。
それに対してローストする前のコーヒー豆は青緑色。
上の画像はコーヒーチェリーからコーヒー豆を取り出し、洗ってから乾燥させたあとの状態です。
いわゆる生豆と呼ばれるものですね。
コーヒー豆販売店だと生豆を購入することもできます。
生豆に火を与えることでコーヒー豆を焙煎していきます。
小学校のときに椎の実を焼いて食べたりしませんでしたか?
少なくとも僕は食べてました。
あれと同じ要領ですね。
焙煎をすることでコーヒー独特の苦みやコクが生まれます。
コーヒー豆焙煎の歴史
そもそもコーヒーは初めから焙煎されてから飲まれていたわけではありません。
コーヒーノキが初めて発見されたエチオピアでは、コーヒー豆をそのまま煮出して飲んでいました。
時代が進むにつれ、コーヒーは薬としてよりも嗜好品としての楽しみ方が強まっていきます。
そのためコーヒーを美味しく飲むために焙煎がスタートしました。
最初は手持ち網での簡易的な焙煎でした。
コーヒーがヨーロッパに広がった当時、コーヒーは貴族が嗜む高級品。
しかし20世紀に入りコーヒーが大衆化していくと、より早く簡単に多くの豆を焙煎できる機械が必要になりました。
現在カフェやコーヒー専門店で一般的に使われている熱風式の焙煎機もこのころに登場しました。
コーヒー豆を焙煎すると栄養や成分はどう変わる?
コーヒー豆を焙煎すると、コーヒー豆に含まれている成分が変化します。
コーヒーにはクロロゲン酸という物質が含まれています。
クロロゲン酸とはぶどうなどに多く含まれるポリフェノールの一種ですね。
クロロゲン酸とは
3-カフェオイルキナ酸 (3-caffeoylquinic acid) とも呼ばれ、コーヒー酸のカルボキシル基がキナ酸3位のヒドロキシ基と脱水縮合した構造を持つ化合物である。コーヒー豆から初めて単離され、現在では多くの双子葉植物の種子や葉から見いだされている。熱に不安定で容易にコーヒー酸とキナ酸に分解する。カフェタンニンの1種とされたこともあるが、タンニンとしての活性が低く、現在ではタンニンの1種としては見なされていない。
コーヒー豆中に 5%–10% 近く含まれ、含有量はカフェイン (1%–2%) よりも多い。カフェインとともにコーヒー抽出液冷却時に認められる白濁の原因とされる。コーヒー抽出液の味覚における影響は複雑である(濃度その他の条件で渋、酸および甘を示す)。抽出時間が長すぎた時に顕われる雑味の原因とされる。(出典:Wikipedia)
クロロゲン酸は熱にとても弱いので、焙煎をすることで失われています。
そのため古代はコーヒー生豆の煮出し汁が薬として使われていたんですよね。
逆にコーヒー成分の代名詞的な存在であるカフェインは熱を加えてもほとんど変わりません。
また焙煎時間によって成分はどんどん変わっていきます。
浅煎りであれば失われるクロロゲン酸の数は少なくなります。
生豆 | 浅煎り | 深煎り | |
クロロゲン酸(ポリフェノール) | 〇 | △ | × |
カフェイン | 一定 |
浅煎りコーヒー豆
ここまではコーヒー焙煎の歴史や成分の変化についての説明でした。
ここからはロースト時間ごとの変化を解説します。
まずは浅煎りコーヒー豆から。
以前は邪道と言われていたローストでしたが、ブルーボトルコーヒーが火付け役になり最近では飛ぶ鳥を落とす勢いです。
最近のコーヒー業界を引っ張っていっている存在なんですよね。
浅煎りの風味や特徴
浅煎りローストにすることで、コーヒー豆自体が持つ味わいを最も感じられます。
コーヒーらしいコクや苦みというよりも、酸味や香りが強調された風味です。
コーヒーと言うよりは紅茶に近いですね。
加熱時間が短いのでコーヒー生豆に含まれるクロロゲン酸も比較的残っています。
浅煎りのコーヒー豆は素材が持つ特徴を存分に感じられることが強みです。
しかし素材本来の特徴が残っているということは、当然コーヒーのくせも強く残っています。
例えるならまだ何も汚れていない赤ちゃんのようなイメージですね。
焙煎の難易度も一番高いです。
なので大量に焙煎することはできません。
また一気にドリップしてしまうとエグみだけが強調されてしまうんです。
なので一杯一杯ハンドドリップで丁寧に淹れることで、コーヒーのとげを極力抑えています。
浅煎りに分類されるロースト方法
浅煎りとして分類されるのは
- ライトロースト
- シナモンロースト
です。
浅煎りのおすすめ飲み方
浅煎りのコーヒー豆はブラックで飲むのがおすすめ。
コーヒー豆が本来持っている複雑な風味を100%感じられるからです。
浅煎りコーヒーはほとんど苦みがありません。
サードウェーブコーヒーが今ここまで人気を博しているのは、とにかく飲みやすいから。
浅煎りコーヒーは従来のコーヒーが苦手という方でも飲めてしまいますからね。
中煎りコーヒー豆
次は中煎りコーヒー。
文字通り浅煎りと深煎りの中間でローストされたコーヒー豆です。
すべてのコーヒー豆の基準になっています。
中煎りの風味や特徴
中煎りコーヒーは酸味・苦味・コクのバランスの良さが特徴。
日本人に最も合ったロースト方法と言われています。
コーヒーのパッケージにローストについて書かれていないものはほとんど中煎りでローストされています。
中煎りになるとコーヒー豆に含まれている油分が若干表面に出てきます。
テカテカとまではいきませんが見た目で水分感を感じられますね。
スタンダードな「THE・コーヒー」と言える味わいです。
中煎りに分類されるロースト方法
中煎りとして分類されるのは
- ミディアムロースト(アメリカンロースト)
- ハイロースト
- シティロースト
です。
中煎りのおすすめ飲み方
中煎りのコーヒーはどんな飲み方でも飲みやすいです。
- ホットでもアイスでも
- 砂糖を入れてもミルクを入れても
おいしく飲めます。
いろんな飲み方に応用しやすいので、家飲み用のコーヒー豆として最適です。
深煎りコーヒー豆
最後は深煎りのコーヒー豆。
最近はサードウェーブコーヒーの台頭によって下火になっていますが、以前はメジャーな流れでした。
というのもサードウェーブ、つまりは第三の波が登場する前には第二の波がありました。
コーヒーの世界にセカンドウェーブを巻き起こしたのは、あのスターバックスコーヒー。
深煎りの豆を使ったコーヒーは世界に衝撃を与えました。
ここからは深煎りコーヒー豆の特徴を解説します。
深煎りの風味や特徴
長い時間焙煎することで、コーヒー豆が持つ香りが外に出やすくなります。
焙煎しているときにコーヒーの香ばしい香りが溢れ出してくるんですよね。
まるで喫茶店にいるような気分。
深煎りのコーヒー豆の特徴は苦味。
浅煎りのコーヒー豆で味わえるような酸味や香りは控えめになっています。
苦味が特徴的な豆を深煎りにすることでさらにビターな味わいを得られるんですよね。
コーヒーの味として一番想像される苦味を最も感じられるロースト方法が深煎りです。
深煎りに分類されるロースト方法
深煎りとして分類されるのは
- フルシティロースト
- フレンチロースト
- イタリアンロースト
です。
深煎りのおすすめ飲み方
深煎りコーヒー豆の特徴的な苦味は、キリっとしたいときに飲むのがおすすめ。
砂糖やミルクを入れて飲むと苦味がちょうどよく中和されてバランスの良い味わいになります。
濃いめに淹れた深煎りコーヒーを牛乳で割ったカフェオレもおすすめ。
ブラックで飲む場合はスイーツなど一緒に飲むのがグッドです。
焙煎ごとの細かい分類の解説
ここまではロースト時間ごとの特徴や風味の違いをざっくり解説しました。
ロースト時間を大きく分けると、浅煎り、中煎り、深煎りになります。
しかしもう少し細かく分けると8種類に分けられるんです。
ということでここからはもう少し細かくローストごとの違いを解説していきます。
- ここでは8種類にロースト方法を分類していますが、あくまで一般的な一例です。
- 明確に分類が決まっているわけではないので、焙煎する人によって分類が異なります。
ライトロースト
コーヒーの焙煎の中で最も焙煎時間が短いのがライトローストです。
コーヒー豆の色も真っ黒ではなく少しだけ焦げ目がついているような状態。
茶色っぽい感じですね。
ほぼ生豆と同じような成分を保っているため、コーヒー豆が持っているフルーティな酸味を存分に感じられます。
コーヒー独特の苦みはほとんどありません。
サードウェーブコーヒーが流行する以前は、ライトローストのコーヒー豆はほとんど流通していませんでした。
なぜならコーヒーならではの飲みごたえが感じられないから。
それに対してサードウェーブコーヒーの特徴は飲みやすさ。
とにかく飲みやすさを追求しています。
そのため極限までロースト時間を短くしたライトローストの焙煎はサードウェーブコーヒーが求めるコーヒー像にピッタリ。
サードウェーブコーヒーの生みの親であるブルーボトルコーヒーでも浅煎りが採用されています。
最近ではサードウェーブコーヒーが大流行していますが、自宅で飲む用のコーヒー豆としてはあまり販売されていません。
シナモンロースト
ライトローストよりは深い焙煎度合いですが、まだまだ一般的なコーヒーに比べるとロースト具合は浅いです。
ローストされたコーヒー豆の色がシナモンに似ていたことからシナモンローストと名づけられました。
浅煎りなので、コーヒーが持つ酸味が特徴です。
ライトローストは酸味のみをダイレクトに感じるタイプですが、シナモンローストは酸味が特徴なもののコーヒーらしい深みを若干風味の奥に含んでいます。
酸味が特徴的なコーヒー豆をシナモンローストで飲むとフルーティーさが口いっぱいに広がります。
ミディアムロースト(アメリカンロースト)
日本で最もメジャーな焙煎です。
分類的には中煎りに位置します。
とはいってもまだまだ酸味も存分に感じられますね。
知名度の高い高級コーヒー豆がミディアムローストで焙煎されることが多いです。
高級コーヒー豆というと、
- キリマンジャロ
- ブルーマウンテン
- コナ
などですね。
なぜならミディアムローストはコーヒーとしての味わいが最もバランスよく出てくるから。
味の違いが分かりやすいんですよね。
逆に言えばコーヒー豆のポテンシャルが一番顕著に表れてしまうのでおいしいコーヒー豆でないと化けの皮がはがれてしまいます。
ミディアムローストは焙煎方法の中で最もコーヒー豆ごとの違いを感じやすいです。
そのためコーヒーのプロが品質の管理を行う「カッピングテスト」という工程でミディアムローストが使われます。
ハイロースト
ハイローストは4番目に焙煎が浅いローストです。
つまりは最もポピュラーなロースト方法と言えます。
ミディアムローストと同じく酸味と苦味のバランスがとても優れているのが特徴です。
ミディアムローストと違う点を挙げるとすれば、ミディアムローストが酸味重視のバランスなのに対してハイローストは苦味重視のバランスである点。
万人受けするタイプのローストですね。
いろんな飲み方で楽しめるので家庭で飲む用のコーヒー豆としておすすめです。
シティロースト
シティローストもまた中煎りロースト。
中深煎りとも分類されていますね。
コーヒー豆の色はかなり黒っぽいです。
中煎りの中では最も苦味やコクが強調された味わいになっています。
ハイローストの苦みが軽い感じだとすると、シティローストの苦みはずっしりした感じに例えられますね。
シティローストはコク深い味わいです。
コーヒー豆は焙煎具合が進めば進むほどコーヒー豆本来が持つ風味は損なわれていきます。
シティローストくらいの焙煎具合になると、品質を保つのが難しくなってくるんですよね。
なので質が良くないコーヒー豆を深煎りにしてしまうと特徴がなくて面白みのないコーヒーになってしまいます。
フルシティロースト
フルシティローストは深煎りロースト。
人によっては中深煎りに分類している場合もあります。
シティローストをさらにローストしたから「フル」シティローストなんですね。
コーヒー豆の色はこげ茶色。
フルシティローストくらいまでローストすると、コーヒーの酸味はほとんど無くなり苦みが最も強調された味わいになります。
濃厚な味わいなので、アイスコーヒーやエスプレッソ用のコーヒー豆として使われていることが多いです。
コーヒー好きな人が満足できる味がフルシティローストですね。
フレンチロースト
フレンチローストは深煎りに分類されます。
深煎りにすることでコーヒー豆内部に含まれていた油分が表面にあふれ出してくるので、てかてかした見た目になっていきますね。
色はかなり黒に近いこげ茶。
コーヒーらしいどっしりした重みのある苦さが特徴的です。
フレンチローストほどになると酸味はほとんど無くなります。
苦みがかなり強くなるので、フルシティロースト同様アイスコーヒーやエスプレッソにして飲むとフレンチローストの良さをMAXで感じられますね。
またコーヒーの上に生クリームを浮かべて飲むウインナーコーヒーやジャムを入れて飲むジャムコーヒーなどのアレンジコーヒーのベースとして使っても美味しいです。
コーヒーの味わいが隠れずに共存してくれます。
イタリアンロースト
イタリアンローストは深煎りに分類されます。
一般的な焙煎具合の中で最も焙煎時間を長くしたものですね。
色は真っ黒。
コーヒー豆が持つ酸味は全く無くなります。
イタリアンローストは強烈な苦みとコクが特徴です。
イタリアンローストの香ばしさは燻製のようなスモーキーさに例えられるほど。
イタリアンローストまでローストすると、ブラックで飲むのは厳しいです。
なのでイタリアンローストのコーヒー豆はカフェオレなどでメインに使われています。
またイタリアンローストはもともとエスプレッソ用としてば焙煎されていました。
そのためエスプレッソで飲んでまずいわけがありませんよね。
コーヒー感を残しながら甘さを加えられます。
自宅でコーヒー豆を焙煎できる?
ここまでは焙煎具合の詳しい解説でした。
普通コーヒー豆を買うときは予めローストされているコーヒー豆を買うのが普通ですよね。
じつは自宅でもコーヒー豆を焙煎することもできるんです。
用意するのは手網焙煎器とガスコンロだけ。
簡単に説明すると、手網焙煎器の中に生豆を入れてガスコンロの上で熱するという感じ。
詳しくはこちらの記事で解説しています。
カフェや専門店で使っている焙煎機は?
自宅でコーヒー豆の焙煎を行う場合は手網焙煎器とガスコンロを使った簡易的なものでも可能。
しかしカフェや専門店は大量の豆をローストしなければいけませんよね。
またなるべく同じ焙煎具合にしないと味にばらつきが出てしまいます。
「同じカフェで頼んだはずなのに、前のコーヒーと味が違う」なんてことは避けたいですからね。
なのでカフェやコーヒー専門店では業務用のコーヒー焙煎器を使っています。
ここからはカフェや専門店で使っている業務用焙煎器についての解説です。
焙煎の方法によってコーヒーの風味は変化します。
同じ火を通すと言っても煮るのと焼くのとでは風味が変わりますからね。
直火式焙煎機
直火式焙煎機は文字通り直接コーヒー豆に火を当てて焙煎するパターンの焙煎機です。
手網で行う焙煎をもっとシステマティックにしたタイプの焙煎機ですね。
穴が開いたドラムに直接火を当てて焙煎します。
これから紹介する焙煎方法の中で最も高温で焙煎することが出来るんです。
高温でコーヒー豆を熱するので、コーヒー豆の表面にある薄皮が熱によって剥がれ落ちます。
剥がれ落ちた薄皮が火に落ちることによってまるで燻製したかのような直火式独特のスモーキーさを付けられるのが特徴です。
デメリットは構造上コーヒー豆に均等な熱を与えることが難しいので出来上がりがムラになってしまうことや、一度に大量に焙煎できないことですね。
なので工場ではなく小規模のカフェなどで使われていることが多いです。
熱風式焙煎機
熱風式焙煎機は熱された空気をドラムに送り込むことで焙煎するタイプ。
ドライヤーみたいなもので起こした熱風を当てて熱している場面を想像してもらうと分かりやすいと思います。
直火式に比べて熱風の量や当て方をコントロールしやすいので幅広い焙煎方法に使えるのが特徴です。
また熱量をコントロールできるので一度に大量のコーヒー豆を焙煎できるのも熱風式の強み。
デメリットは直火式に比べると火力が落ちるので、あっさりとした味わいになってしまうことです。
大規模な工場では熱風式が使われることが多いですね。
半熱風式焙煎機
半熱風式とはドラムに直接火を当てますが、ドラムに穴が開いていません。
なので直接コーヒー豆に火があたることがないです。
特徴は直火式と熱風式の中間と言った感じ。
直火式より多くのコーヒー豆を一気に焙煎でき、熱風式よりもコーヒー豆の個性を出すことが出来ます。
炭焼き式焙煎機
焙煎方法としては直火式に分類されます。
ただ燃やすための燃料として炭を使っているので炭焼き式と呼ばれるんです。
通常直火式焙煎を行う場合の燃料は電気やガスを使って行うことが一般的。
しかし燃料を炭に変えることで遠赤外線が発生します。
遠赤外線効果によってコーヒー豆を全体的に熱することが出来るようになるんです。
つまりムラのない焙煎を実現できます。
デメリットは火力の調整が難しいのでテクニックが必要なことや炭を使うので焙煎のコストがかかることです。
まとめ
今回はコーヒー豆の焙煎による違いや知識についてまとめてみました。
ローストの具合が少し変わるだけでコーヒーの味は全く変わってきます。
コーヒーのプロも一番難しい工程は焙煎だと口をそろえているほど。
それだけ焙煎の世界は奥深いものです。
毎日のコーヒーを知識と一緒に味わうともっと楽しめるかもしれません。